20220902 | |
長崎新聞 | |
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押し寄せる検査希望者 コロナ発熱外来の現場に密着 大村・田川小児科 新型コロナウイルスの流行第7波が続く。長崎県内の感染者は7、8月の2カ月で約12万人に上った。 ただ県全体の医療機関のうち、診療・検査医療機関として県に届け出ているのは全体の4割にも満たない。 このうち約6割はかかりつけの患者のみを受け付けているという。このため患者を限定しない診療所(クリニック)に患者が押し寄せている。 大村市東本町の田川小児科(田川正人院長)もその一つだ。8月29日、診療の現場に密着した。 午前8時。記者がクリニックに着くと、既にほとんどのスタッフが出勤し、開院に向けて慌ただしく準備を進めていた。 田川小児科では新型コロナの感染疑いがある患者は原則、院外に設置したテントや車の中で診療・検査を行う。 スタッフは手際良くテントを張り、その周りに椅子10脚、冷風機2台を設置。声をかけ合い、時折、笑い声が聞こえる。 一般診療の患者を同8時半から受け入れつつ、発熱外来も同9時から1時間おきに最大6のグループ(家族などの少人数)に対応する。 田川院長は「今は少し落ち着いているけど、盆明けは1日で30組以上来たこともあったかな」。 同8時15分ごろ、スタッフの一人が「電話がたくさん鳴っていますよ」と教えてくれた。 一般診療も含め、予約はホームページから受け付けているが、細かい確認は電話ですることが多い。 「ご予約いただいていましたが、コロナの検査をご希望ですか」「10分前までに駐車場にお越しください」「午後ならまだ検査は可能ですよ」。 2回線ある電話は、開院前から鳴り続けていた。 同8時45分ごろ、1台、2台とクリニック前に車が止まった。 院内から小走りに出てきたスタッフが「検査のご予約の方ですか」「お名前は」と確認。 駐車場内に誘導し、10分足らずで予約の6グループがそろった。 丁寧な診療で不安解消 スタッフ10人フル回転「基幹病院の負担減らしたい」 8月29日午前9時。大村市東本町の田川小児科(田川正人院長)の駐車場には発熱外来を予約した6台の車が時間通りにそろっていた。 3、4人のスタッフが院内と駐車場を急ぎ足で何度も往復。 陽性だった場合に備え、保健所に出す情報を聞き取ったり、健康保険証や診察券を受け取ったり、動きが止まることはほとんどない。 同9時過ぎ。スタッフ数人が手分けして「検査を始めますので車から降りてください」と1台ずつ声をかけた。 検査待ちの人たちが車から2人、3人と次々に降りてくる。 同時に田川院長がフェースシールドと青いガウンを身に着け、クリニックからテントに向かった。 口元を見ると、マスクは医療用に変わっていた。 「発熱はいつからですか」「何度まで上がりましたか」「ほかに症状は」「基礎疾患、つまり持病はありますか」「家族で陽性の人は」。 端的に聞いているが、表情はいつも穏やか。子どもに話しかけるときは特に丁寧だった。 問診が終わると、抗原検査を実施。棒状のものを鼻に10秒ほど入れられるため、幼い子どもは痛みや不快感で泣き出したり、くしゃみをしたりする。 仮に陽性ならウイルスを含んだ飛沫(ひまつ)やエアロゾルがテントに広がることになる。 風が通り抜ける屋外で、フェースシールドやマスクで守られているとはいえ、近距離で接するスタッフは常に感染リスクと隣り合わせだと感じた。 「みなし陽性」 2グループ目は家族4人で来院。数日前に同居家族の1人が陽性になっていた。 一人一人に経過を聞いていくと、全員が38度以上の発熱があり、中には喉の痛みや体のだるさを訴える人もいる。 典型的な家庭内感染のようだ。田川院長は「私の診断は、みなし陽性。 ただ抗原検査をしたら、この瞬間は陰性と出るかもしれない」。 発症から一定の時間がたたないと陽性と出ないケース、いわゆる偽陰性の可能性があるらしい。 4人は納得した様子で、みなし陽性を受け入れた。 残る4グループの診療と検査が終わったのは同9時25分ごろ。 それから約20分後、田川院長と、複数の検査キットが入った銀色のトレーを持ったスタッフが外に出てきた。 「○○さん、陽性でした。ここに2本の線が出てるでしょう。きょう保健所に届け出るから。ショートメールが届くからね」 検査結果を伝え終わると、スタッフが各車を巡る。保険証を返却したり、薬の説明をしたり、ずっと小走りだ。 記者がスタッフの1人に「忙しいですね」と声をかけると、笑顔を浮かべながら「毎日こんな感じですよ」と答え、院内に消えていった。 午前は9、10、11時に計17グループが訪れた。 検査結果が出る合間などに一般の患者も診療。この日は手足口病に感染した幼い子どもが何人も訪れていた。 ひと息付けるのは昼休みくらいだ。 午後2時半に検査を再開。時間までに6グループが来院した。 ただ、2グループには車の中で待つよう指示があった。テントではなく、車内にいる人に田川院長が窓越しに問診し、検査も実施した。 後で確認すると、既に陽性になっていた人も同乗していたため、降車させなかったという。 立っているだけでも汗がにじむのに、田川院長はガウンにフェースシールドを身に着け、診療と検査を続けていた。 スマートフォンの天気アプリを見ると、この時間の大村市の気温は32度台だった。 □「どこも同じ」 田川院長が子どもの検査に慎重になる場面があった。 発熱などの症状が出て間もない上に、38度に達していない場合、または家庭や学校の同じクラスで陽性者が出ていないケースなどでは抗原検査をしても陰性になる可能性が高いという。 検査で陰性か陽性かをはっきりさせたいという保護者の思いには一定理解を示しつつも 「子どもにとって検査の負担は軽くない。陰性になると分かっていて検査を繰り返すのはどうかと思う」。 「丁寧な診療ができなければ患者さんの不安が解消されない」と考える。 以前は1時間に6グループを超える検査を受け入れたこともあったが、上限を6グループにしたのはそのためだ。 記者が「もっと多くのクリニックが発熱外来に協力すれば、もう少し余裕ができるのではないか」と質問すると、 田川院長からは意外な答えが返ってきた。「院長の熱意だけではどうしようもないことがある。うちはスタッフ10人がフル回転して何とかやっているが、 例えば3人だとしたらやりくりは厳しい。長崎や佐世保ではビルのテナントに入っていて駐車場もないクリニックもある。そうなるとほかのテナントがいい顔をしないのでは」 感染者の高止まりで多忙な日々が続く。「なぜそこまで頑張るのか」と聞くと、 田川院長は「われわれが頑張ることで基幹病院の負荷が減ったらいい。地域の2次、3次医療の本来の機能を守りたい」と語った。 「取材してもらったのはあくまでも当院のスタイル。他院ではもっと大変なところもあるだろうし、もっと良い工夫をしておられるかもしれない。 まあ、どこでもうちと同じようにバタバタだとは思いますが」とほほ笑んだ。 |
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田川小児科 長崎県大村市東本町542 電話0957-52-4000 https://www.tagawa-kids.com/ |
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